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ジャイロ効果
原文:yama@18
校正:eagle0wl
ジャイロ効果とは ヨーヨーをエンジニアリング的に考えていくうえで、最低限必要となる力学の知識を簡単に述べましょう。 ヨーヨーを語るうえで外せないのがジャイロ効果 (Fig.1) です。ジャイロ効果は、ヨーヨーが回り出すことで発生します。ジャイロ効果により、ヨーヨーは回転の向きを変えないような力を発生しています。これにより、ヨーヨーの回転が安定するため、回ってるヨーヨーは傾きにくいのです。 ジャイロ効果は、角運動量ベクトルなど様々な表現で解説できますが、今回はなるべく簡単な表現を用いて説明します。ここでの説明は、力学のページの解説を参考にしています。
点が持っている運動エネルギーと方向を矢印で表してみましょう (このDの長さが力の大きさ、専門用語で「ベクトル」といいます)。 ここに、回転している「コマ」があるとしましょう。Fig.2 に指し示す4点(A〜D)に着目すると、コマの円盤の密度が均等であれば、4点は円の接線方向に同じ大きさの力を持って回っています。
回転が傾くとどうなるか
運動方向は傾きにあわせて変化しますが、コマがもっている力の方向は元々持っている動きの力を維持し続けようとする「慣性の法則」に基づいて、元の回転面に対して平行の力を持っています。よって、Fig.3 に示す点Aと点Cでは、上下に水平移動しただけなので方向は変わりませんが、点Bと点Dでは力の向きが変わってしまいます。
真上から見ると分かりませんが、横から見ると、点Bと点Dとでは回転方向と力の向きに違いが生じています (Fig.4) 。 各点での力の振る舞いを以下に示します。 点A 上下に移動しただけで、力の向き(赤)と回転方向(青)は同じなので変化なし 点B 元の力の向き(赤)に戻そうとするため、回転方向(青)を上に上げる力が働く 点C 上下に移動しただけで、力の向き(赤)と回転方向(青)は同じなので変化なし 点D 元の力の向き(赤)に戻そうとするため、回転方向(青)を下に下げる力が働く
外部から加えられた力(外力)によって変えられた回転方向(青)を、元の力の向き(赤)に戻そうとする作用、言い換えると、回転軸を変えられた物体が元の向きに戻ろうとする際、回転方向を力の向きにあわせようとして働く力がジャイロ効果です (Fig.5) 。 運動エネルギーの cosθ がジャイロ効果として働く力となります。 回転は目に見えますが、力の向きは目に見えません。そのためイメージしづらいと思いますが、これで理解できたでしょうか? ドリフト走行の例 まだ分からないという方は、おそらく「なぜ方向を変えたものが元の方向に動こうとするのか」がイメージしづらいのだと思います。 ここでドリフト走行で考えてみましょう。車体が突然向きを変えたとしても、それまでの慣性力の向きは変わりません。
ドリフト走行の失敗例(制御ミス)
まず、車体が滑ることで車体の方向が変わります。その後、方向を変えたことによる減速効果で失われる運動エネルギーと、タイヤから路面に与えるトルクとのバランスによって進行方向を変えていくのがドリフトです。 方向が変わっても、車体の進行方向への惰性が強かった場合は曲がりきれずにコーナーに激突します。車体を傾ける力だけが強すぎた場合はスピンします。 ここで重要なことは「車体の向きは変わっても、力の向きは変わらなかった」ということです。 もちろん、ある程度進行方向への力を削いで(減速して)曲がるという方法もあります。ただ、この場合はドリフト走行とは言いませんが…。 ドリフト走行の成功例
進入速度による慣性力を3の位置で殺して、車体のグリップを復帰させます。その結果、タイヤの力を路面に伝達することに成功し、タイヤの力を進行方向の力に変換することができたわけです。 ヨーヨーで言えば、ジャイロスコーピック・フロップに相当します。このトリックは、ジャイロ効果を利用したもので、回転力を犠牲にしてヨーヨーを強制的に傾けるというものです。このトリックは、ドリフト走行とイメージが似ています。 車体の方向転換 → ヨーヨーの傾き
進行方向への慣性力 → ジャイロ効果
タイヤが与える路面への力 → ヨーヨーの回転力 この3つがバランスよく行われないと、ドリフト走行もジャイロスコーピック・フロップも成功しません。 ドリフト走行の失敗例(スピン)
回転体の力の向きは目に見えないためイメージしづらいですが、車の動きに見立てるとイメージしやすいのではないでしょうか? 結局、回転体は目に見えない力の向きに引かれて回転面を維持しているのです。
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