有効幅の効果

原文:yama@18
校正:eagle0wl
有効幅と傾きやすさの関係

有効幅とは、ヨーヨーの溝に糸を乗せることのできる幅で、ボディ内側の傾斜も幅に含まれます。この有効幅は、トラピーズという基本トリックの成功率に大きく関わるため『トラピーズ有効幅』と呼ばれることもあります。この有効幅について、ヤジロベエを例にしながら考えてみましょう。



物理的特性の違い

Fig.1
ヤジロベエ

ヤジロベエ (Fig.1) からも分かるとおり、幅が広いほどバランスが取れるので安定します。これはテコが長くなることで、中心に掛かる力のモーメントが大きくなるからです。重さ1の重りが中心に与える力は、てこの長さに比例します。

ただし、ヨーヨーに関しては「持ちやすさ」「投げやすさ」の要素が加わるため、そう単純ではありません。極端に幅が広くなると、ヨーヨーとしては扱いにくいものになってしまいます (Fig.2)

Fig.2
幅が広いほどバランスが取れるが、ヨーヨーとしては扱いにくくなる。

また、幅が広いとミスが発生したときにヨーヨーが傾きやすくなります (Fig.3)

Fig.3
幅が広いと、ミスをしたときに傾きやすい


糸乗せに失敗したときの傾きの変化

ボディの内側の傾斜に糸が乗った場合を考えると、その糸が外側にかかるほど傾きやすくなります。この事象は、基本トリックであるトラピーズでの”糸乗せ”時に発生する力のかかり具合を図示することで簡単に理解できます (Fig.4 〜 Fig.7)

Fig.4
幅が広いと、ミスをしたときに傾きやすい
Fig.5
ボディの中心から同じ距離の位置に糸が当たった場合、幅が広い方が傾きにくい


Fig.6
有効幅が広ければそれに頼ってしまうのが人情
Fig.7
外周に糸が当たると大きく傾いてしまう

ヤジロベエの傾きにくさは「てこの長さ」に比例しますが、2倍3倍と伸ばしていかない限り優位に立つことができません。これはヨーヨーの幅についても同様ですが、扱いやすさなどのバランスを考えると、ヨーヨーの幅は直径と同じぐらいまでが限界でしょう (Fig.8)


Fig.8
ヨーヨーの幅は直径と同じぐらいまでがバランスの限界


ラウンドバタフライとストレートバタフライ

ボディ内側の傾斜にも種類があります。今回は、ストリングトリックに適した形状である「ラウンドバタフライ」と「ストレートバタフライ」 (Fig.9)、両者の特性を考えてみましょう。


Fig.9
左「ラウンドバタフライ」と右「ストレートバタフライ」

重量配置

形状の工夫もありますが、ストレートバラフライよりラウンドバタフライのほうが、ボディを肉厚にしやすい(外周に重量を寄せやすい)形状をしています (Fig.10) (Fig.11)

Fig.10
ラウンドバタフライは外周に重量を寄せやすい
Fig.11
ストレートバラフライは外周に重量を寄せにくい

オールプラスチック・オールアルミニウムのように、ボディ全体が均質な材質でできているものはラウンドバタフライが外周に重量を寄せやすいでしょう。逆に、金属リムのように外周以外に極力重量を置きたくない場合であれば、最低限の強度を確保したうえでストレートバタフライにしたほうが良いでしょう (Fig.12)

Fig.12
金属リムを搭載するのであれば、ストレートバタフライ形状が望ましい

プレイ中の傾き

トラピーズ時の糸の当たり方を考えてみましょう。

ラウンドバタフライの場合は、外周に糸が当たると入射角度が浅くなり、中心に近い位置であれば入射角度が深くなります。つまり、糸の当たる箇所が外周寄りであるほど傾きやすくなります (Fig.13)

Fig.13
ラウンドバタフライ形状は、当たる位置で入射角が変わる

ストレートバタフライは、どの位置に当たっても入射角度は変わらないため、傾きやすさは同じです (Fig.14)

Fig.14
ストレートバタフライ形状は、当たる位置に関わらず入射角は一定



まとめ

・確実に溝に糸を乗せることのできる上級者であれば、ラウンドバタフライ形状のほうが傾きにくい。ただし外周に糸が当たると大きく傾く。
・初中級者は、どの位置であたっても傾きの変わらない、ストレートバタフライ形状が扱いやすい(?)。

・オールプラスチック・オールアルミニウムなど、ボディ全体の材質が均質であれば、ラウンドバタフライ形状が外周に重量を配分しやすい。
・金属リムなど比重の違う材料を外周に配置する場合は、ストレートバタフライ形状がより外周にウエイトを置くことができる。